遷移金属酸化物の相転移研究グループ

VO2の金属―絶縁体転移の研究

金 倉満、 上野 裕


KEYWORD    VO2、金属―絶縁体転移、電子相関



VO2340Kで金属-絶縁体転移を起こし、転移の前後で電気的、光学的性質や結晶の構造が変化する。このVO2の転移は発見されてから40年近く経つにもかかわらず、VO2の持つ電子同士の複雑な相互作用による電子相関によりVO2の金属-絶縁体転移は理論的に理解されていない。そのため物理的に興味深い物質の1つである。一方、応用面においても転移による物理的変化を利用したサーモクロミック材料やFETのチャネル物質など様々な応用の可能性を秘めている。

尾崎研究室では、このVO2に対して基礎的と応用の観点両方から研究を行っている。基礎的な観点からはR-T測定、S-T測定、トンネル分光測定の結果と電子相関の効果の関係を明らかにすることを目指している。また応用的な観点からは、VO2FETのチャネル物質として用いるため電界を利用したキャリアドーピングを行うことで転移を制御することを目指して研究を行っている。


 


図1 結晶構造の変化。左は高温相である金属相のTetragonal型。転移温度以下になるとTetragonal型からVイオンがペアをつくりジグザグ構造をとっていることで、右のように低温相である絶縁体相のMonoclinic型になる。



図 VO2の転移の様子。340K付近で抵抗値が105程度変化している。